急速に導入が進む「HRテック」サービス。このサービスによって採用活動はどのように変わっていくのでしょうか。具体例に沿って紹介します。
HRテックとは
HRはHuman Resource、つまり人財の略です。これにテクノロジーを加えた造語がHRテックです。
人事関連の業務(採用、マネジメント、育成、評価、勤怠など)上で、最先端テクノロジーであるAI技術、ビッグデータ解析、クラウドなどを活用し、人事における課題解決を行うのがHRテックの概要です。
具体的には、採用に関するデータを一元管理・可視化する、あるいは採用における求職者と企業とのマッチングを最適化する、人事業務で自動化を進める、あるいは効率化するなどがその内容です。
こうしたHRテックはソリューションサービスとして、これらを提供する会社はそれぞれのサービスをパッケージングし、得意分野のカテゴリーごとに展開しています。その数は2019年4月現在、大小合わせて400サービス以上あり、その数は増え続けています。
HRテックで採用は変わるのか
HRテックは今まで扱いきれなかったデータと、いままで導入されてこなかったテクノロジーを使い、いままで見えてこなかったデータを軸に、客観的な評価を下し、新しい施策を立て実行と改善のサイクルを回していくことで、採用担当者の経験と勘に頼らない、新たな知見を活用する試みと言えます。
HRテックを活用した場合、採用活動がどのように変わるのかと言うと、まず採用プロセスそのものに変化がもたらされます。
これまでも述べてきたように、エントリー待ちの採用活動ではなく、積極的な情報配信をベースに、自社の考え方にマッチングする人を育て、リードを増やし、エンゲージメントを構築するマーケティング視点の採用活動が中心になっていくと考えられます。
HRテックは従来の採用プロセスに新たな風を吹かせ、より科学的な業務へと進化させるきっかけになりえると言えます。
HRテックへのシフトチェンジが経営にもたらすもの
採用をはじめとして、HRテックが会社経営にもたらすものは決して小さくないと言えます。というのも、業界単位ではなく、採用や人事、労務管理といった枠組み、概念そのものを変える可能性を秘めているからです。これまでも一つのテクノロジーや発明が、既存のやり方や技術を一新する場面に我々人類は立ち会ってきましたが、このHRテックにもそのポテンシャルが存在します。
これまでは名前のある、資本力に優れた企業に優秀な人材が流れていましたが、これからは働く環境が優れた企業が優秀な人材を獲得し、その規模を広げていく時代になります。
人材の経験や勘に頼りきる人材育成、あるいはフォローでは、こと企業経営においては、永続的な未来を描きにくくなるでしょう。
従業員の採用や活躍を支える手立ては、HRテックによるデータとテクノロジーによってもたらされるべきです。そうならないと企業の業績や生産性の向上は、見込めません。より会社の規模が大きければ大きいほど、HRテックの依存性は高まっていくものと思われます。
HRテックが世の中に広まるにつれ、その市場規模はどんどん大きくなっています。国内では2017年に200億円に満たない規模でしたが、2018年には250億円、2019年には350億円を突破する勢いであり、2023年までには1,000億円以上の規模になると見込まれています。
市場規模が大きくなればなるほど、HRテックを導入する企業が増えるということですから、その導入企業と未導入企業との間に明確な差異が生まれるはずです。
その差異がもたらすものが、経営のあり方を根本から変える影響力を持つ可能性が高く、その導入に対し十分な検討をしておくべきではないでしょうか。